リーマンの荒波にもまれた証券界、激変

 リーマン・ショックは日本株の低迷を招き、東京・兜町の証券業界や社員たちの生活にも大きな影響を及ぼした。危機から10年。日本株はバブル後の最高値圏となったが、株価の裏付けとなる日本企業の「稼ぐ力」が本当に復活したかについては慎重論もある。(新宅あゆみ) 直近には急落したが、なお高値圏の日経平均株価。大手証券会社で個人投資家向けのファイナンシャルアドバイザー(FA)をする男性は、「(2008年9月の)リーマン・ショック後は企業業績も最悪で、何もできないまま顧客の資産を減らした」と振り返る。 ショック後は連日のように株価が急落。証券会社の都内の支店に勤めていた男性の職場では、情報端末の株価下落を告げるアラーム音が繰り返し鳴った。 当時は、証券会社からお金を借り、多額の株式取引で大きな利益を狙う「信用取引」をする顧客を担当していた。だが、ショック後の株価急落で資金繰りに苦しむ顧客もいた。 信用取引では顧客に証券会社に保証金を差し入れてもらうが、追加の保証金(追い証)を入れてもらう必要が出た。男性は追い証を求めて方々に電話したがつながらず、顧客の会社や自宅で待ったこともあった。退職金で投資信託を買い大損した高齢者もいた。FAは1年契約で、報酬は営業成績に左右される。男性の報酬は大幅に減り、マンションも引き払った。 その後の5年間は「顧客との信頼を取り戻す時期だった」。株価が低調な中、損を出した顧客の信頼を回復するのは大変だったが、少しずつ投資の提案を続け、再びリスクを取って株式を買う客が増えてきた。 12年末、「アベノミクス」を掲げた第2次安倍政権が発足し、翌13年4月には日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が異次元の金融緩和を開始。男性の報酬も戻り、マンションを購入した。「景気回復や成長への投資が相場をリードしてきた。日本企業の『稼ぐ力』の向上で、株高傾向は続くのでは」と期待する。 リーマン・ショックは米国が震…