自虐「まずい棒」で危機一髪 銚子電鉄救ったエンタメ心

 地方の足を担うローカル鉄道の経営が厳しさを増しています。銚子電気鉄道(千葉県銚子市)は、本業の鉄道収入だけでは赤字が続き、副業の食品販売でしのいでいます。8月にはスナック菓子「まずい棒」を発案し、ヒットしました。とはいえ、今後も人口減が続きます。存続の方策は。竹本勝紀社長(56)に聞きました。 ――なぜ苦境に? 「過疎化による人口減や観光客の減少で、ピーク時に年間200万人以上いた乗降客数が年々減り、1995年度に100万人を切った。副業で始めた『ぬれ煎餅(せんべい)』の販売が好調で、鉄道の売り上げの倍を稼ぎ出すことができ、事業の柱とすることができた」 「ところが、2004年、当時の社長が横領事件を起こし、国や自治体からの補助金が打ち切られた。生命線とも言うべき補助金が受けられず、車両の借入金の返済も迫る。なりふりかまわず惨状をホームページで訴えた。これを見た多くの人たちが、ブログなどでぬれ煎餅の購入を呼びかけてくれ、注文が殺到して再び救われた」 ――それなのに、なぜまた苦境に? 「東日本大震災後に『銚子は放…

競争率100倍 農業の会社に若者が殺到するわけは

 就職活動ルールの是非論が飛び交うなか、来春に就職する学生の就活が山場を越えた。さて、今年の応募状況はどうだったろうか、と前から気になる企業があった。 イオングループの農業法人イオンアグリ創造(千葉市)である。全国21カ所の直営農場を運営する。本社を含む社員は約650人、平均年齢は30歳前後と若い。100人以上が働く大農場もある。 2014年に定期採用を始め、15年には大卒の採用に踏み切った。この年、驚いたのは採用担当だけではない。グループ幹部も「本当か」と数字を疑った。数十人の採用枠に4千人もの応募があり、倍率はイオングループで最高の約100倍に達したのだ。 翌年からは採用枠を絞り、説明会場を減らしたが、1500人規模の応募が続いた。急に農場を広げたり、増やしたりすることも難しく、今年は採用枠を1桁台にしたが、応募者は500人に上った。 この数字は何を意味するのか。15年の農業就労人口は半世紀前の7分の1の210万人、60歳以上が8割を占めるまでになり、持続可能性が問われている。 だとすれば、この現象は家業の農業を継ぐ人材は少なくても、働く条件を整えれば、農業に従事したいという人材は少なからずいるということではないか。その条件とは何か。例えば、新規就農者の実態調査では、ほぼ半数が課題として挙げたのが「所得の少なさ」であり「休暇取得の難しさ」だった。 労働基準法では、仕事が天候に左右される農林漁業者には、労働時間、休憩、休日に関する規定が除外される。つまり、農業法人でも一般企業のような法定労働時間は適用されず、時間外給与は支払わなくてもいい。これでは彼らの将来不安は解消されない。 イオンアグリ創造はグループの就業規則を基本に、農業の実態にあう働き方を追求している。時間外給与の支給、出産・育児休業はもちろん、雨続きで農作業ができない日が続く週には休日を多くし、翌週以降に就業時間を振り替えるようにした。いまは年2回5日以上の連続休暇を取得しようと呼びかけている。 社長の福永庸明さんは「農業を産業化するのが我々の役目」という。 農業法人が一斉に一般企業並みの労働条件に改めるのは難しい。ただ、新鮮な農作物を食べ続けるために、食に携わる企業は若い人たちに魅力ある農業とは何かを追い続けるべきだろう。 イオン宇都宮農場でキャベツを担当する杉山敬祐さん(25)は学生時代、途上国でのボランティア活動で食糧の重要性を知り、農業を志したという。「小さな苗がキャベツに育つ喜び。収益も見える化されているのでやりがいもある」と話す。 若い人たちは職業としての農業に魅力を感じていない。まずは、この定説から疑ってもいいのではないか。